マーケティング

「なぜ」を繰り返すことで「お客様の声」は有効活用することが出来る。

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「お客様の声を聞け」と言われる一方で、「お客様の声を聞いても意味はない」と言う人もいます。一体この違いは何なのでしょうか?

「お客様の声を聞け」と言う人が考えていることは、商品サービスをさらに売るためのヒントが、お客様の不満の中にあると考えている人と言えるでしょう。現行の商品サービスにある不満点を改善することで、商品サービスを導入することを辞めた一定数の人たちにも販売することが出来ると考えるからです。つまり、より良い商品になるためのヒントをお客様の声から探し出すために「お客様の声を聞け」というわけです。

一方で、「お客様の声を聞いても意味はない」と考える人は、お客様の声を聞いたところで、その通り改善したところで本当に買ってくれるとは限らないと考えているからでしょう。お客様が「こんな商品が欲しい」とか「もっとここをこうして欲しい」と言ったとしても、実はそれは大したことではなく購入動機にはならない類のものである場合があるからです。お客様は本当に欲しいものを知らないと考えているわけです。

「お客様の声を聞いても意味はない」という言葉で思い浮かべるのは、マクドナルドでしょう。昔、サラダマックが思いのほか売れなかった原因を「お客様の言う通りにしてしまった」ことであるとされているからです。当時の消費者の間では健康志向が強まっており、インタビューを通しても健康的なサラダをキーワードとした商品を欲しがる消費者が多数存在したので販売したのですが、実際にはあまり売れなかったという有名な事例です。消費者は、健康志向でありながらもマクドナルドに対しては健康志向的な商品を求めていたわけではなかったのです。

「お客様の声を聞け」と「お客様の声を聞いても意味はない」のどっちを信頼すれば良いのか?と思っている人も多いかもしれませんが、どちらかを選ぶというのはあまりにも本質的ではないと私は考えています。というのも、「お客様の声を聞け」も「お客様の声を聞いても意味はない」もどちらも、より購入してもらうための「コアとなるものを探し出せ」と言っているに過ぎないからです。手法の違いでしかありません。

しかし、これでは、お客様の声を聞けば購入動機につながるものが見つかるかもしれないし、聞かなくても見つかるかもしれないということになってしまいます。それではあまりにも無利益な記事になってしまうので、今回は「お客様の声の活用方法」について書いていきたいと思います。

まず、「お客様の声」とは何でしょうか?お客様の声とは、お客様が商品について感じたことを言葉にしたものであると定義できます。そのため、あくまで感じたことを言っているのであって購入動機につながることを言っているわけではないわけです。

「お客様の声」≠「購入動機」

お客様の声を聞いても意味がないと感じている人は、まさに「お客様の声」≠「購入動機」と考えているわけです。では、お客様の声を聞くべきと考えている企業は「お客様の声」=「購入動機」と考えているかというとそういうわけではありません。あくまでお客様の声の中の一部に「購入動機につながるヒントがある」と考えているに過ぎないのです。だから、お客様の声を聞くべきと考える人はお客様の声を100%信頼しているわけではないということです。

つまりは、「お客様の声」に対する認識の違いによって「お客様の声を聞く派」と「お客様の声を聞かない派」に分かれてしまっているということになります。

私たちはどう「お客様の声」に向かい合えば良いのでしょうか?

私は「お客様の声は「一つの現象」であると考えるべきだと思っています。現象には必ずその現象を引き起こす「原因」が存在します。原因があって現象が引き起こされるのです。海水温の上昇が雨雲を発生させるように、「雨」という現象には必ずその原因が存在します。それと同じようにお客様の声は現象であり、その声になるための原因がどこかにあると考えるのです。

もし、お客様の声を「現象」と捉えるならば、その声になる原因は何か?と考えることが出来ます。「なぜ、お客様はそのような発言したのだろう?」とより深いところまで知ろうとします。この「なぜ」がとても大切だと私は思うのです。しかも、一回の「なぜ」ではなく何度も「なぜ」を繰り返すことが大切です。

このように考えることで「お客様の声は意味があるのか?無意味なのか?」という不毛な議論は必要なくなります。そうではなく、お客様の声の裏側にある原因は何なのか?そのような発言をさせる根本原因を見つけ出すことでお客様の声を上手く活用することが出来るようになるはずです。

例えば、マクドナルドの件で言えばお客様からは「健康的なサラダが欲しい」といった類の発言があったわけです。そして、その発言の裏側にある発言させる真意は「健康でありたい」「美しくありたい」という気持ちでしょう。では、なぜ「健康でありたい」「美しくありたい」と考えるのでしょうか?それはきっと「綺麗になったね」とか「若々しくなったね」言われたいからでしょう。つまりは、「社会的動物である人間としての欲求を満たしたい」からです。

ここまで深掘り出来ていれば「サラダマック」が、少しずれた施策であることに気づいたのではないでしょうか?「健康でありたい」「美しくありたい」という発言は、社会的動物としての欲求を満たすための1つの手段であり、決して物理的な美しさを本当に求めているわけではないということです。「健康でありたい」や「美しくありたい」という言葉の裏には、「社会的つながりに満足できなくなってきている」という本当の原因があったのです。そこまで深掘りしなければお客様の声を有効に活用することは出来ないのです。

お客様の声は単なる現象です。その現象の奥深いところに原因が潜んでいるのです。その原因に行き当たるまで「なぜ」を繰り返すことがお客様の声を活用するために絶対的に必要な要素と言えるのではないでしょうか。

ご存知の通り、ここで私が言っていることは、広く一般的に言われていることの焼き直しです。しかし、ほとんどの人がこんな簡単な「なぜ」を何回も繰り返せを実行できていません。私も含めて。マクドナルドでさえ、そうなのだから多くの人が出来ていないのでしょう。

しかし、私は思うのですが、色んなテクニック的な手法に頼らずとも「なぜを繰り返す」という基本中の基本を徹底的にやっていた方がはるかに有益なのだろうと思うのです。今回は「お客様の声の活用法」的な話で「なぜを繰り返す」ことの重要性について話しましたが、ビジネス全般においても「なぜを繰り返すこと」で解決出来ることは多く存在していると思います。毎回思いますが、実は愚直に基本を繰り返し実践している人が最後には勝つのだと思います。

参考になれば幸いです。

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