マーケティング

BtoBマーケティングの『事前にホームページを閲覧して意思決定している』は本当か?

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BtoBマーケティングの世界では、顧客になる人というのは事前にホームページから情報収集してくる人が多いと考えている。しかし、その話は本当なのだろうか?と私は思っている。一部の業界(特にIT業界)ではそうかもしれないが、日本全体から見るとそのような傾向は未だにないように感じるのである。

先日、とあるお客様からお問合せ頂いたのであるが、その人は知人から当社のことを知ってメールを送信してくれていた。基本的な内容をお伝えするといくつかの質問が返って来たのであるが、その質問のすべてがホームページに掲載している内容ばかりだったのだ。かつ、メールで返信するとすべて読んでいないようであった。メールの上部に書いてあることしか読んでおらず、もう2行先を読んでもらえれば、知れることを返信して聞いてくるのである。それが何度か続く経験をしたのだ。

なぜ、メールを読まないのだろうか?そして、なぜ、ホームページを読まないのであろうか?上記のBtoBマーケティング業界の常識を当てはめるのであれば、彼はあり得ない行動をしているのである。私の結論は、少しでも面倒なことをしたくないと考えているからだ。人間はそもそも本質的に怠惰であるということもあるが、少しでもメール文章が長くなると面倒になるし、ホームページというまあまあ読むのに時間がかかるものを前にすると一瞬でめんどくさいが優位になってしまうのだろうということだ。

また、その個人個人でも情報を取得するタイミングは違う。今は、この情報が欲しいけど、さらに進んだ情報については今は興味がないということもある。だから、そのような情報を自分のタイミングで一つ一つ順番に聞けるメールという手段を用いるのであり、必要な情報以外は読み飛ばしているのである。また、事前にホームページの中から自分の欲しい情報を探し出すなんてことは面倒過ぎてしないのである。

以前、勤めていた会社ではこんなことがあった。知人からの紹介で私の会社を知り電話してきたのであるが、結局その人は実際に仕事を受注してプロジェクトが完了するまで一度も当社のホームページを閲覧することはなかった。プロジェクト完了後に聞いたことであるが、ホームページなんかにそんな詳細な情報が掲載されているとさえ思っていなかったし、そんな時間をかけてホームページの内容を読むより実際に話してしまった方が速いということであった。このようなことは実は仕事の大半を占めている。

世の中のBtoBマーケティング業界にいる人間は、事前にホームページの情報を閲覧している人がほとんどだと思い込んでいるかもしれないが、それは絶対に違う。実感としては、日本に限定すればほとんどの人はホームページの情報なんて見ちゃいない。ホームページのテキストを読むことすら面倒だと感じているのである。それが現実なのだ。

このことは、彼らのような人間と一緒に働くとよく分かる。ホームページの情報を見ない人と言うのは、日常的にネット検索さえする習慣がない。さらに、ホームページの情報を事前に閲覧して商談に挑むということさえしない人が意外にも多いのである。若者には全く理解できないことであろうが、そういうネット社会から取り残された人が大多数を占めるのが日本であるのだ。

そのようなネットやITから取り残された人間にとって、ホームページは仕事上まったくもって重要ではない。だから、自社のホームページもしょぼい情報しか掲載されていないのが普通である。しかし、彼らにとってはそれがホームページという常識であり、それ以上でもそれ以下でもないのである。自社のホームページがそんなしょうもない情報しか掲載されていないことを認識しているから、他社のホームページもそのような情報しか掲載されていないだろうと考える。だから、検索してホームページの情報を閲覧する価値を全く理解できないのである。

そもそもお問合せ頂く前に多くの人が事前にホームページの情報を閲覧してある程度意思決定をしているというリサーチは、アメリカ発のものである。日本にも適用できるとは思わない方が良い。Newspicksなどビジネス系のネットニュースサイトでは、『「在宅でもスーツを着ろ」「Zoomは上司より先に退出するな」という意味不明なビジネスマナーが日本企業を滅ぼす』のように啓蒙的な記事をプッシュしてくるが、日本人の殆どのビジネスマンはそんなニュースは見ていない。彼らからすれば、そんなニュースは存在せず、昔から変わらない昭和の価値観で仕事をたんたんと進めていくだけである。一体何が悪いのか分からない。いくらネットで叫んでも彼らには伝わらないのである。

ネットでニュースを見ていると、非常に多くの啓蒙的な記事が存在するために、これだけ頻繁に議論されていることだから、世の中の殆どの人は昭和的な考え方を古臭いと感じているはずだと思ってしまうかもしれない。しかし、そうではない。彼らはネットのニュースなんて見ちゃいないのである。ツイッターで何万とリツイートされているコンテンツなんて所詮何万である。ほぼ存在しないのと同じなのだ。

ネット関連の仕事をしていると、カルチャーギャップに苦しむことが多い。それは、彼らとネット関連のプロダクトを提供する側の考え方や習慣があまりにもかけ離れているからである。ネット関連の人間からすれば、自分たちすら海外から見れば遅れていると感じるものであるが、日本人のほとんどはもっとはるかに遅れているのである。ほとんどの日本人は、どうしようもなくネットやITの進化に取り残されている。

ネットやITで商売する以上、この現実を受け入れずにビジネスをすることは不可能である。この現実を受け入れどうビジネスを展開していくのかを考えるのが大切であり、アメリカの理論を日本に適用して思い込みでビジネスをするのはあまりにも危険だ。現実を見なければ先行きは厳しいものになると考えたほうが良いのである。

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